渋い声の政治家は当選しやすいことが判明。世界中の大統領選で実証。
国民は、政治家を選ぶときに、何を基準に選んでいるのだろうか。
見た目だ。
政治家の業績や政策で選んでいるわけではない。多くの国民が、顔や背の高さ、肉体的な魅力で政治家を選んでいることが分かっている。
男性の場合、政治家として好まれやすい性質は、背の高さ、肉体的な強さ、支配的な態度、強そうな見た目、つまりテストステロン(男性ホルモン)のレベル高さと関連する性質が好まれることが分かっている。
雑に言うと、喧嘩に強そうな性質をもった人を相応しいリーダーとみなしてしまう。
われわれはいまだに、原始時代に獲得した性質で、リーダーを判断してしまうようだ。
そして、テストステロンの影響を強く受ける性質が、声の低さである。
国民は、低い声の政治家を選んでいるのだろうか?
声の低い政治家は投票されやすい
マイアミ大学とデューク大学の研究者は、2012年に発表した論文で、低い声の候補者の声の方が低い声の方が「政治家として」ふさわしいと認識され、投票されやすいことを明らかにした。
ただし、この研究は、実験室内で行われた研究だ。
果たして、低い声の政治家は、実際の選挙でも勝ちやすいのだろうか。
大統領選の勝者は、声が低い
クロアチアの研究者らは、この疑問に答えるため、アフリカ・アジア・ヨーロッパ・南北アメリカを含む世界中の大統領選候補者の声データを収集し、声の高さと大統領選の勝敗に関係があるかどうか調べた。
その結果、大統領選に勝った候補者の声は、敗者よりも周波数が低い傾向にあった。つまり大統領は、ライバルよりも声が低かったのだ。さらに勝者は、声が低いだけでなく、声の高さの変動が少ないこともわかった。
大統領選の勝者は、渋くて落ち着いた声、とでも言えるだろうか。
相手によって有利な声は変わる?
先ほどの研究での大統領選挙では、候補者は二人とも男性だった。たしかに、男性対男性の場合、より男性的な性質の候補者の方が、リーダーとしてふさわしいと判断されるかもしれない。
では、相手が女性の場合の選挙では、どのような声が有利になるだろうか。
マイアミ大学の研究者は、2016年に発表した論文の中で、下院選挙に注目してこの分析を行っている。
相手が男性の場合、クロアチアの研究者と同じように、声の低い候補者の方が、得票数が多かった。これは候補者が男性でも女性でも同じ傾向が得られている。つまり、相手が男性の場合、男性でも女性でも声の低い性質の候補者が有利なようだ。
一方、相手が女性の場合は逆の傾向が得られた。相手が女性の場合、むしろ声が高い候補者が当選しやすかったのだ。この傾向は候補者が男性でも女性でも同じであるが、男性候補者の時により強い効果が現れている。
つまり、この研究は、選挙の相手が男性の場合はより低い声の候補者が、相手が女性の場合はより高い声の候補者が有利になることを示唆している。
日本の選挙に応用すると
- 街頭演説では高い声で演説するべきではない。男性も女性も、落ち着いた低い声で話すことを心がけると良いだろう。
- 選挙カーでの呼びかけも再考する必要がある。ウグイス嬢による高い声での呼びかけは、よくないかもしれない。本人が呼びかけするときは、もちろん低い声で行う必要がある。
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参考資料
Klofstad. Candidate voice pitch influences election outcomes.
Banai et al. Vocal characteristics of presidential candidates can predict the outcome of actual elections