さすがスウェーデン。「神」ですらジェンダーフリーに
ジェンダーフリーの最右翼ともいえる北欧スウェーデン。男女が同等なパワーと影響力を持つべきだという確固たる信念に基づき、世界でも最も熱心に男女平等に取り組んでいる国です。
実際、女性の労働参加割合は85.4%、女性国会議員の割合も43.6%と世界で最も高い水準です(日本はそれぞれ71%と9.5%)。
ジェンダーフリーに対するスウェーデンの取り組みには聖域がないようです。スウェーデン国教会は、来年の5月20日に更新する予定のガイドラインで、神を「彼, He」や「主, Lord」と呼称する代わりにジェンダー中立的な言葉で代替することを認める予定です。
新しい言葉を作る。
スウェーデンでのジェンダーフリーへの取り組みは、社会の変革や教育の分野にとどまりません。 言葉を創造することすら行います。
2015年、ジェンダー中立な人称代名詞"Hen"が正式に導入されました。これは “Han(彼は)”、“Hon(彼女は)”に代わるもので、ジェンダーを指定しない代名詞です。学校で使用される教科書、裁判所や行政機関における公文書にも“Hen”が使われています。
reference: Church of Sweden - Wikipedia
宗教ですらジェンダーフリーに
この熱狂的なジェンダーフリーへの取り組みは、宗教ですら射程に収めます。
いくつかの海外誌が11月24日に報じたところによると、国民の6割を信者として受け入れているスウェーデン国教会は、神を、男性を包含した言葉ではなく、ジェンダー中立的な言葉に置き換えることを認める予定にしているとのことです。
つまり、神は「彼」や「父」でなくともよいというわけです。
「父と子と精霊の名において(in the name of the father, son and holy spirit)は、単に 「神、三位一体の名において(In the name of god, the trinity」と表現できるようになるのでしょう。
批判へのシンプルな回答
もちろん、この決定に関してはいくつかの批判もあります。
ルンド大学の准教授であるクリステル・パームブラッドは、デンマークのKristeligt Dagblad新聞に次のように語っています。
「スウェーデンの教会が共通の神学的遺産を尊重しない教会として知られるようになったのは本当に賢明ではない。」
しかし、スウェーデン国教会を率いる大司教アンシェ・ヤケレンは意に介していないようです。
「神学的には、例えば、神はジェンダーを超越しています。神は人間ではありません」とスウェーデンのTT通信社に語っています。
(ここまで読んだみなさん、大司教を男性と無意識に想定していませんか?アンシェ・ヤケレン大司教は女性です。)
イスラムとの衝突
キリスト教でジェンダーフリーはそこまで大きな問題は予想されませんが、もうひとつの巨大宗教イスラム教ではどうでしょうか。
スウェーデンは移民政策の結果、イスラム教徒の割合が近年急速に増加しつつあります。そしてイスラム教徒のルール・倫理体系とジェンダーフリーの概念が衝突しつつあることが報告されています。
例えば、男性に肌を見せられないムスリマを対象に、女性だけがプールを利用できる時間を設けている自治体に対して、男女平等に反すると指摘する政治家が出てきています。
ムスリムの女性が男性の目を気にせずに水泳ができるように公共プールで男女別の時間を設けるところが出ていることについて、バ・クンベ文化大臣(環境党)はSVTの番組で「男女一緒の水泳は長年の戦いの成果。男女別は問題だ」と反対の姿勢を示した。https://t.co/Pd0JWW3BsK
— スウェーデン政治経済情報 (@sweden_social) 2016年5月3日
今後も、今後も男女平等を目指すスウェーデン社会とイスラムの価値観の衝突は続くと予想されます。平等と対話を重んじるスウェーデンが、この葛藤をどのように解決していくか、欧州の移民問題を考えるうえでも重要な事例になるでしょう。
参考資料
Church of Sweden to stop using ‘he’ and ‘Lord’ in push for gender-neutral language | The Independent
ジェンダーフリー代名詞がスウェーデンに誕生。“Han(He)”と“Hon(She)”は今後…!? - エキサイトニュース
[図説スウェーデン]⑪女性の政治家が多い国 – 一般社団法人スウェーデン社会研究所
Den svenske kirke: Gud behøver ikke at være en mand - politiken.dk