選挙ポスター、こんな顔だと当選する。【画像あり】
Reference: File:Donald Trump (5440393641) closeup.jpg - Wikimedia Commons
政治家は顔だ。
これは比喩ではないようだ。有能そうに見える顔の政治家は、投票されやすく、実際の選挙でも有利に働いていることがわかっている。国民が、政治家の主義主張ではなくその見た目によって投票している証拠は、日本を含む世界中の国民を対象にした研究でも確認されている。
さらに、「有能そうに見える」ことは、他の印象、例えば「信頼性がある」や「魅力的にみえる」、そして「穏やかそう」な見た目よりも、政治家にとってはるかに重要であることがわかっている。
では、具体的に「有能そう」だと判断される顔はどういう特徴を持っているのだろうか。言い換えると、どういう顔の特徴でわれわれはその人物の見た目の有能さを判断しているのであろうか。
投票されやすい顔
この疑問に答えるために、プリストン大学の研究グループは、コンピューターによって同じ人物の顔写真を、少しずつ変化させる方法を用いた。この実験では、特定の人物の顔写真をコンピューターによって10段階に変化させた画像を0.5秒だけ見せられ、被験者は直感に従ってその画像の「有能さ」を評価するのである。この実験の結果、有能そうに見える顔の特徴が分かった。
それは、丸みを帯びていない輪郭を持ち、目と眉毛の間が近く、頬骨が高く、角ばった顎を持った顔であった。興味深いことに、これらの顔の特徴は、童顔と言われる顔の反対の特徴を示している。つまり、同じ人物であれば、「より童顔に見えない」写真が、有権者には有能だと評価されやすく、投票に結び付きやすいということである。
最上段(Aの段)の写真3枚を見てほしい。
どの人が最も有能そうに見えますか?
答えは(おそらく)右端の顔である。
最上段の写真は、有能と判断される顔の特徴を変化させ合成した顔であるため、右の顔ほど有能だと判断されやすい強い傾向がある。それは、目と眉毛の間が近く、頬骨が高く、角ばった顎を持った顔である。有権者は、右端の顔の特徴を持った政治家に投票しやすいのだ。
たしかに最上段右の写真の顔は、左の顔よりも有能そうに見える。
しかしより重要なのは、われわれは実際の選挙でも、有能そうな顔の人に投票してしまっているということだ。つまり、人間は、選挙という大事な意思決定であっても、「顔の見た目」というその意思決定とは本来関係ない情報に影響を受けてしまっているということだ。
逆にいうと、選挙ポスターやパンフレットの顔の見た目を変えることができれば、それだけで投票されやすくなることを意味している。
(この写真は研究に使われた顔そのものではないが、有能と判断されやすい顔の特徴を理解できる。ちなみに2段目は右に行くほど支配的な顔、3段目は外向的な顔、そして4段目は信頼できる顔を示している)
顔を加工する?
まず、各候補者にできることは、撮影技術によって、有能そうな顔の特徴を持った写真を撮影することである。ポーズや表情によって、有能そうにみえる顔は作れるはずだ。
もうひとつの可能性は、撮影した写真の編集段階で、顔の輪郭などを加工して有能に見えやすい顔を創りあげることもできるだろう。その際、目標とするのは、シャープな輪郭を持ち、目と眉毛の間が近く、頬骨が高く、角ばった顎を持つ顔である。実際、選挙ポスターにおいて、候補者の顔写真のシワやシミなどを取り除くための加工は、一般的なように思える。
しかし、加工した写真と候補者本人の顔が大きく違う場合には、有権者はある程度ネガティブな印象を持つだろう。また。選挙ポスターの顔写真をどこまで加工して良いか、というのはデリケートな問題である。各候補者の判断に委ねられている。