選挙解体新書

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当選しやすい政治家はこんな顔【海外研究】

 

前回の記事で、有権者は「顔の見た目」で投票する強い傾向があることを紹介した。

 

election.hateblo.jp

 

 

では、投票されやすい顔・されにくい顔とはなんだろうか。当選を目指す政治家にとって、どういう顔が「いい」顔なのであろうか。

 

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/1024/cpsprodpb/40A7/production/_88515561_senators_nogap976.jpg

US election 2016: Super Tuesday tests candidates - BBC News

 

有能で、信頼でき、穏やかで、正直に見える顔

 

 前回の記事で紹介した研究では、写真を見て「どちらが有能そうに見えるか」という判断基準が、うまく現実の選挙結果を予測していた。つまり「より有能そう」に見える候補者が、投票されやすいということを示唆している。この傾向は、日本を含む世界中の国の選挙を対象にした研究でも確認されている。

 

 では、「有能さ」以外にも、有権者に訴えかけている顔の特徴はないだろうか。アメリカの研究グループは、さらに、詳しい顔の特徴に関する解析を行った。彼らはまず、有能そうに見える候補者は、その他の特徴として、どのような印象をもたれるのかを調べた。実験の結果、有能そうに見える候補者は、より「信頼でき」、「感情的に穏やか」で「正直」そうに見え、より「不注意そう」には見えないことがわかった。そしてそのような見た目をもった候補者は、より投票されやすいこともわかった。

 

童顔は投票されにくい

 

 逆に投票されにくい顔の特徴はなんだろうか。この研究グループは、候補者の顔の「魅力」、「親しみやすさ」、「童顔さ」、「見た目の年齢」と「見た目の有能さ」が、どのように投票されやすさと関連しているかを調べた。というのも、「魅力」、「親しみやすさ」、「童顔さ」、「見た目の年齢」などの特徴は、人間が他者の顔を評価するときの重要な指標であることが他の研究によって知られていたからである。

 

 その結果、有能そうに見える候補者は魅力的で親しみやすく見え、「魅力」と「親しみやすさ」が高いと判断された候補者は投票されやすい傾向があった。一方で、より「童顔」のように見える候補者は「有能」だとは判断されず、実験では投票されにくい傾向があった。反対に、「見た目の年齢」が高そうに見える候補者はより有能と判断され、投票されやすい傾向があった。

 

 見た目が幼いと有能そうに判断されないという関係は、この研究グループ以外のグループからも報告されており、ある程度一貫した結果だと言えるだろう。(しかし、童顔な候補でも、選挙で好まれる場合もあることがわかってきた。それは今後の記事で紹介する予定だ)

 

見た目の有能さがいちばん重要

 

 最後に、この研究グループは、どれくらい「有能そうに見えるか」という基準に加え、「魅力」「童顔さ」「信頼できそう」「親しみやすさ」「顔の好ましさ」など様々な顔の印象を勘案して、結局のところどのような印象がもっとも投票されやすさと関連しているのかを調べた。結果はシンプルであった。他の様々な条件(印象)を考慮しても、やはり、他の印象に比べて「有能そうに見える」という印象が、はるかに投票されやすいということがわかった。政治に限らず、われわれがリーダーに求める資質として「有能さ」が重要視されることを考慮すると、有権者が政治的なリーダーを選ぶ際にも、直感的に「有能そうに見える」候補者を選んでしまうことには納得がいくだろう。

 

選挙活動への応用

 ここまでの研究成果を選挙活動に応用してみよう。

 

 選挙ポスターなど選挙活動に利用する写真は、より有能に見える写真を選ぶべきだ。

 有能に見える写真の判断は自分で行うのではなく、なるべく多くの他人に「どれがもっとも有能に見えるか」という基準で判断してもらうのが良いだろう。

 

簡単な工夫であるが、世界中の研究成果を信じるならば、この判断はあなたへの投票を確実に増やし当選へ近づけるだろう。

 

主要参考資料

Todorov, et al. Inferences of Competence from Faces Predict Election Outcomes

Olivola Todorov. Elected in 100 milliseconds: Appearance-Based Trait Inferences and Voting