選挙解体新書

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今こそ見たい、保守とリベラルの分断を乗り越えるためのTED動画5選

 ブレグジットで揺れたイギリス、大激戦となったアメリカ大統領選挙、そしてフランスでの国民戦線の躍進など、世界中で「保守とリベラル」、「グローバリズムとナショナリズム」の対立が深まっています。それはわが国でも同じかもしれません。

 

 また、真偽があいまいな記事を大量配信するニュースサイトが、政治的な分断を促進している点も社会問題化しています。

分断を生み出す方法。全く同じ会社が左向け、右向けに偏ったニュースを流すディストピア

 

 世界ではこのまま政治的な二極化が進み、民主主義は危機に瀕してしまうのでしょうか。今日紹介するのは、この政治的な対立を解消し、健全な対話・議論をする方法を考え続けているエキスパート達の動画です。彼らに共通するのは、現在の政治的な分断の現状を認めたうえで、この状況を打破するための前向きな提案を行っている点です。

 

 

1. 政治的な問題をうまく議論するには by ロブ・ウィラー


 まずはこちらの動画から。

 彼はまず、国民に、保守とリベラル、ナショナリズムとグローバリズムなど政治的な指向に「大きな違い」があることを認めます。そして、その違いがなぜ形成されるのかを心理学の観点から説明します。そのうえで、その違いを乗り越えてお互いに対話する方法を、最新の研究の数々を紹介しながら説得力を持って提案します。

 ロブ・ウィラーはスタンフォード大の社会心理学者。人々を団結させる力(協力、道徳観、団結力)や分断させる力(先入観、争い)、政治と組織の複雑な相互作用に焦点を当てた研究で有名です。

 

2. リベラル派と保守派のモラルの根源を語る by ジョナサン・ハイト

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 二人目はジョナサン・ハイトの講演。彼は保守とリベラルの違いが、どのような生物・心理的な基礎によって生じているのかに興味があります。彼の示す膨大なデータは、保守とリベラルに、根本的な心理的な違いがあることを明らかにしていきます。そして、その違いを丁寧に分解することで、保守とリベラルの双方が歩み寄るための手法を提案します。ところどころに挟まれる政治的にきわどいジョークも必見です。

 

 ジョナサン・ハイトは、バージニア大学心理学部教授。専門は道徳心理学で、道徳の進化的・感情的な起源、文化との関連を研究しています。また、その知見を用いて現代の政治的危機を乗り越えるための本を執筆しています。

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学

 

3.ブレグジットはなぜ起きた?次にするべきことは何か? by アレグザンダー・ベッツ

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イギリスの名門オックスフォード大学で難民研究センターの所長を務めるアレグザンダー・ベッツはブレグジットでの政治的分断について講演します。彼は、保守とリベラルの違いだけでなく、教育による格差、収入による格差、住んでいる場所による格差、そして外国人嫌悪などさまざまな要因が、イギリス国民の分断を生んだと熱意をもって話します。

 

 個人的な「分断」の体験談として、ブレグジットでは残留賛成派だった彼は、ブレグジットで離脱が優勢だった地域に、これまでの人生でたったの4日間しか滞在してなかったことに気づき、衝撃を受けたと述べています。

 

4. 危険なインターネット上の「フィルターに囲まれた世界」by イーライ・パリザー

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4つめは、インターネットそれ自体が政治的な分断を生む危険性を述べるイーライ・パリザーの講演です。googleやfacebookが、ユーザーの好みに合わせて検索結果をカスタマイズしようとするに従い、ユーザーには望みの情報だけしか表示されなくなります。これが、政治的な「フィルター」、つまり自分の政治的な思想とは違う意見を排除して、異なる意見と接する機会を少なくしてしまう危険性を生むのではないかと彼は考えています。

 

 イーライ・パリザーはインターネット活動家で、近年驚異的な急成長を遂げたバイラルメディア「Upworthy」 創設者です。 フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF) や、閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義 の著者としても有名で、ネットの検索アルゴリズムが生む、孤立化を危惧しています。

 

5. 保守派もリベラル派も一致団結して問題解決に取り組もう by アーサー・ブルックス

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最後の動画は、社会科学者のアーサー・ブルックスの希望の持てる講演です。保守派もリベラル派もどちらもが、自分たちだけが愛で動き、相手方は憎しみで動いている間違った考えを持っています。彼は保守もリベラルも超えて、人類最大の問題 -貧困- を解決するための個々人が心にとめるべきシンプルな考え方を提案します。そのアイデアとは・・・

 

 アーサー・ブルックスは、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所で所長を務める社会学者でプロのホルン奏者。特定のテーマや社会科学の特定の領域に特化しない総合的調査を駆使し、文化・経済・政治の問題をひろく研究している。

 

講演者の著作

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学

 
しあわせ仮説

しあわせ仮説

 

 

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

 
閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義