選挙解体新書

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リベラルは保守よりも保守的だった。Facebookのビッグデータで判明

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 保守(右翼)は伝統的な価値観を重んじ、自分とは異なる意見をあまり参考にしない。逆にリベラル(左翼)は、多様な価値観を許容し、自分と異なる意見にも耳を傾ける。

 

 政治傾向に関するこのステレオタイプは間違っているかもしれない。2015年にFBの研究者がscience誌に発表した論文では、保守とリベラルに関して、予想とは真逆の姿を照らし出している。

 

 自分と異なる意見に対して、リベラルの方が、保守よりも保守的だったのだ。

 

 人は自分と異なる意見を避ける

 

 人は、自分の好きな物や都合の良い情報を好む傾向がある。そして、自分の意見と異なる意見は選択的に無視してしまう。

 

 例えば、あなたがある銘柄の値上がりを予想してその株を買ったとしよう。その銘柄の将来の値動きが気になり、ネット掲示板を覗いてみた。すると、その銘柄の値上がりを予想した好意的なコメントと否定的なコメントが入り乱れている。合理的な考えをするなら、両方のコメントを同じように参考にするはずだ。しかし、あなたはすでにその株を持っているため、値下がりを予想するコメントは無視してしまい、値上がりを予想する好意的なコメントばかり目を通すはずだ。

 

 この、自分と同じ意見を好んで探してしまう傾向を、「選択的接触」と呼ぶ。

  

政治で選択的接触は国民の分断を生む

 

 政治の世界での選択的接触は、危機的な状況を生み出す。もし保守派がリベラルの意見を聞こうとせず、リベラルも保守派の意見を聞こうとしないのなら、異なる政治思想を持つ人々の断絶を生み出してしまう。これはまさに米大統領線やイギリスのEU離脱の国民投票で露見した現在の政治的危機であり、同じことがわが国をはじめ世界中で懸念されている。

 

 今回の論文では、世間のイメージとは逆に、保守の方がリベラルよりも自分とは異なる意見を参考にしている、という姿が明らかになった。

 

 

フェイスブックのビッグデータ解析

 

 研究者らが解析に用いたのは、米国のフェイスブックユーザーのうち、政治思想をFB上で表明している約1000万人。

 

 6ヶ月の間にユーザー間でシェアされたリンクから、22万6000件のニュースを選び、そのニュースが保守的かリベラルな意見かを判別した上で、そのニュースがどのようにFB上で流通しているかを分析した(シェア数38億、表示回数9億、クリック数5900万)。

 

 すると、「反対の意見」を自分の友達が共有した割合は、リベラルの人の場合24%で保守は35%だった。さらに、反対の意見をクリックした割合は、リベラルでは20%、保守は29%となっていたのだ。

 

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 つまり、一般のイメージとは違い、リベラルの人よりも保守派の人の方が、自分とは異なる意見を参考にしていた。

 

  

分断を避けるために

 

 この研究は、SNSというユニークな研究対象を用いて、政治的態度の違う国民間の政治的分断と、歩み寄りの可能性を示した点で素晴らしい研究だ。

 

 一方で、SNSによって異なる意見が自動的に排除され、自分が目にする意見は自分と同じ意見ばかりが目に入ってしまう「フィルターバブル」の危険性も指摘されている。

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義

 

SNS上での政治思想の増幅、異なる意見の分断と歩み寄りは、21世紀の政治家・国民にとって避ける事のできない重要なテーマだ。

 

 

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