「童顔」が選挙に勝つためのセオリー
世界中の研究が示すのは、有権者は「有能そうに見える」という単純な基準で政治家を選んでいるということだ。
そして童顔の政治家には残念なことに、童顔の特徴を持つ顔は、有能そうに見える顔と反対の特徴を持っているのだ。
では童顔の政治家は、常に選挙で不利なのだろうか?
実は必ずしもそうは言いきれないことがわかってきた。
童顔の候補者にも勝つ方法はあるのだ。
童顔のイメージ
人間の幼児は、丸顔で大きな目、小さな鼻、小さなあごなどの特徴を持つ。大人であってもこれらの特徴を持つ人は“幼い顔”や“童顔”であると認識される。そして、童顔の大人には、幼い子供に対するのと似たような感情、つまりナイーブさ・誠実さ・可愛らしさなどを持ちやすい傾向がある。
一方で、童顔と対極の特徴を持つ顔はより大人びて成熟した顔に見られがちで、支配的で強そうで有能そうに感じられる。
このような見た目の政治家は、有権者に好まれやすい。そのため、選挙に勝つためには童顔の候補者は不利だと考えられていた。
童顔が有利になる状況がある
さまざまな実験を行う中で、たしかに最も投票されやすい顔である有能そうに見える顔と、童顔に見える顔には反対の傾向があるけれども、実際の選挙や模擬選挙実験の結果では、必ずしも童顔の候補者は不利ではないことが分かった。
女性候補者では、童顔であるかどうかは選挙結果に影響していないし、なんと男性候補者では童顔であればあるほど当選しやすい傾向があったと報告する論文もある。
なぜ童顔の候補者は有能に見えないのに、選挙で負けないのだろうか。それは、童顔と親しみやすさには強い関係があるからではないか、と考える研究者もいる。
親しみやすい顔というのも、有能そうに見える顔と同じように、選挙に勝ちやすい顔だとわかっている。そのため、童顔そうに見えることは、有能に見えないという選挙で勝つうえで不利な点もあるが、親しみやすく見えるというメリットもあるようだ。
童顔の政治家は調整役に向いているかもしれない
童顔の政治家は、親しみやすく、信頼できると判断されやすい傾向がある。この特徴によって、童顔の政治家は、敵対するグループから信頼を得やすいかもしれない。
イスラエルの研究者は敵対関係にあるユダヤ人とパレスチナ人の間の信頼性に、政治家の顔が与える影響を調査した。
この実験で、研究者は、イスラエルのユダヤ人が敵対関係にあるパレスチナ人の政治家から和平の提案をされたとき、そのパレスチナ人の政治家が童顔であるときには、その提案が好意的にとらえやすいことを明らかにした。
これは、童顔が持つ特徴が、敵対するグループという信頼できない相手のイメージを和らげた結果かもしれない。
童顔の候補者はリベラル向け?
また別の研究では、リベラルな思想を持っている有権者は、支配的に見える顔の候補者を低く評価し、支配的でない顔を好むことがわかっている。
童顔の特徴は、まさに非支配的な顔と一致するため、特に童顔の候補者はリベラルな有権者に強くアピールするのかもしれない。
童顔の政治家へのメッセージ
あなたがもし童顔なら、それは政治家として強い武器を持っていると思っていいだろう。あなたの顔は、より信頼でき、親近感を与える印象を持っている。
しかしながら、童顔な顔は有能には見えづらいため、有能さを前面に出したイメージ戦略は効果的な選挙戦略とは言えないかもしれない。むしろ、信頼感や親近感を増幅させるような選挙ポスター・リーフレットを使って選挙を戦う方がいいかもしれない。
主要参考資料:Winning Faces Vary by Ideology: How Nonverbal Source Cues Influence Election and Communication Success in Politics