選挙解体新書

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今、さいたま市長選挙が熱い。【立候補者紹介】

 

 

 2017年5月7日に告示された、さいたま市長選挙。

 

 この市長選は、因縁と執念が入り混じる、非常に面白い選挙戦だ。

 

 注目するのは、さいたま市長選の候補者のうち現職「清水勇人」市長と

 元衆議院議員「中森福代」氏。

 

 この二人は、もともと共に自民党公認の埼玉県議を務めており、その時期も重なっている元同僚だ。また両氏とも、今回が3度目の市長選になる。

 

 もともとは自民党公認で同僚とも言える清水氏と中森氏が、どのようにして今回のさいたま市長選で戦うに至ったか。二人の候補者の戦いの歴史を紐解いていく。

 

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オーソドックスな清水勇人氏

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Reference: 清水勇人・さいたま市長:時事ドットコム

 

 現職の清水勇人氏の経歴は、いわゆる正統派だ。

 

 日大・法・政経を出て、松下政経塾に入塾、その後一度の落選を経て2003年の埼玉県議会議員選挙で初当選。このときは自民党公認だった。

 

 2007年に再選したが、2009年の市長選に出馬するために県議を辞職。それと同時にそれまで所属していた自民党も離党

 

 市長選では民主党の強力な選挙協力を取り付け、自民党・公明党公認の現職市長を破り当選。120万人の巨大都市、さいたま市の市長となった。

 

 自民党を離党し民主党と協力した清水氏の選挙戦略上の嗅覚は、素晴らしいものだったと言えるだろう。なぜなら、2009年5月に行われたさいたま市長選の後、7月の東京都議会議員選挙、そして8月の衆議院議員選挙で自民党は民主党に大敗し、歴史的な政権交代となったからである。

 

 

執念の中森福代氏 

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Reference: 中森ふくよ応援ソング - YouTube

 

 一方の、中森福代氏の経歴は強い執念を感じさせる。

 

 都立赤羽高校を卒業後、会社員を経て2001年の補選により埼玉県議会議員に。同じく自民党公認候補である。

 

 2003年に再選したものの、2005年の市長選に出馬するために県議を辞職。自公推薦の現職市長と選挙戦を戦うものの、敗退。

 

 しかし中森氏はすぐに政界へ復活する。同じく2005年に行われた衆議院議員総選挙で、比例区候補として当選。いわゆる小泉チルドレンである。

 

 衆院議員となった中森氏であったが、さいたま市長への執念は消えていなかった。2009年のさいたま市長選を迎えると、なんと国会議員を辞職し、再び無所属として出馬した。

 

 しかし、前述の清水氏に敗北してしまった。

 

 さいたま市長選に出馬するために、県議と国会議員の両方を辞職した、執念の政治家といえる。

 

 

さいたま市長をめぐる、両者の戦いの歴史

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第一ラウンド【2005年市長選】

 この年、中森氏が初めて市長選に立候補。自民・公明公認の現職市長相川氏に対して、互角の戦い繰り広げたが、惜しくも落選。その差はわずか13000票あまりだった。

 

第二ラウンド【2009年市長選】

 

 現職相川氏に対して、民主党の支持を取り付けた清水氏、2度目の挑戦となる中森氏が挑む構図となった。この年の市長選では、民主党への世論の風をうまく読んだ清水氏が見事当選した。

 

 一方、自民党の支持層は、現職相川氏と元自民党衆院議員の中森氏で票が分裂してしまい、戦略的に選挙を展開できなかった。

 

 二人の票を合わせると、清水氏の得票とほぼ同数であったことからも、その悔しさがうかがえる。

 

第三ラウンド【2013年市長選】

 

 清水氏が再選を目指し立候補。対する自民党候補は、埼玉県議の長沼氏を擁立した。中森氏は、自民系候補の重複を避けるため、立候補を取りやめている。

 

 結果は、清水氏がほぼ全ての選挙区で長沼氏を圧倒し、再選した。

  

2017年の選挙の見どころ

 

 今回の選挙戦は、「2度あることは3度ある」清水氏と、「3度目の正直」中森氏の戦いとなるだろう。一般的に、高齢でない現職市長は、選挙戦で圧倒的に有利であるため、清水氏ペースで選挙戦が進むだろう。

 

 しかし一方で、2005年の選挙戦で無所属ながら現職候補に肉薄した経験をもつ中森氏も侮ることができない。なにより、さいたま市長選にかけるその執念がすごい。特に、前回の選挙戦は、他の候補に出馬を譲った経緯があるため、選挙にかけるエネルギーが蓄積しているだろう。

 

 また、共産推薦の前島英男氏の動向も、選挙戦を左右する可能性がある。

 

 

 正統派と執念の候補が激突する、さいたま市長選が楽しみだ。

 

低投票率が続いているさいたま市長選。

さいたま市民の方におかれましては、ぜひ選挙に足を運んでいただきたく思います。

 

続報:さいたま市長選挙の結果を予想する。

 

 

 

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追記:誤記を修正しました。ご指摘ありがとうございます。