仏「国民戦線」大躍進の裏にある選挙ポスターの変化
France Presidential Election: Far-right leader Marine Le Pen addresses supporters
移民排斥や反EUを掲げ、フランスで急速に支持を広めてきた右派政党の国民戦線。今世紀初頭にほとんど支持を得ていなかったが、ここ十数年で支持層を大幅に増加させ、先日23日に行われた大統領選挙では、国民戦線党首を務めてきたル・ペン氏は20%以上の得票率を獲得し決選投票に進むまでになっている。たった十数年で、弱小政党から主要政党に様変わりしたのだ。
この大躍進の裏には何が潜んでいるのだろうか。フランス国民のあいだで、高い失業率や移民との文化的圧力に対する不満が増加したことがあるかもしれない。もしくは、国民戦線の主張が、父親のジャンマリ・ルペン氏から娘のマリーヌ氏へ党首が受け継がれる過程で、より多くの有権者に受け入れられやすいよう緩和したことも関係しているだろう。
国民戦線は、選挙ポスターを変化させた
これまでの研究で、多くの国民は視覚的な情報(見た目)だけで候補者を選んでいる可能性が指摘されている。
国民戦線の大躍進の裏にも、選挙のイメージ戦略が関わっている可能性がある。イギリスのイースト・アングリア大学の研究者は、国民戦線の大躍進にともなうイメージ戦略の変化を調べるために、2007年と2012年の議会選挙のときの国民戦線候補者の選挙ポスターのデザインを比較した。
調査の結果、大躍進を遂げた2007年から2012年にかけて、国民戦線候補者の選挙ポスターは大きく変化していた。候補者の写真が占める面積が大きくなり、顔写真はポスターの中心に移動し、そして候補者自身が目立つようなポスターに変化したのだ。
国民戦線のポスターは「主要政党」になった
これまでの研究で、弱小政党の選挙ポスターは、候補者の顔写真を小さく中心から外れたところにデザインし、その代わりに党の主張を強くアピールする傾向があることが分かっていた。一方、主要政党の選挙ポスターは、候補者自身の顔写真が大きな面積を占め、候補者自身の主張をアピールする傾向がある。
つまり、国民戦線は国民からの支持を広げ議席を伸ばすとともに、その選挙ポスターも「主要政党」らしいものに変化していたのだ。
選挙ポスターの変化が躍進のカギだったかも
この研究者は、選挙ポスターのデザイン変更は、個々の候補者が自分でデザインを変えたのではなく、党から直接指示されたイメージ戦略の一環だろうと述べている。というのも、国民戦線の候補者のデザインは軒並み同じように変化していたからだ。
選挙ポスターのデザインを変えることが、どれほど選挙の結果を変えたのか、実際のところはわからない。しかし、多くの国民が、見た目だけで政治家を選んでいる世界中の研究結果を鑑みると、選挙ポスターを主要政党のようにデザインを変更したことは、国民戦線の大躍進に大きく貢献したのだろう。
たかが選挙ポスターとあなどることはできない。国の未来さえ変化させる力を持っているかもしれない。
主要参考文献
Dumitrescu Up, close and personal: the new Front National visual strategy under Marine Le Pen